
2026年9月18日、公益社団法人 京都府宅地建物取引業協会様主催の「令和8年度 第二回会員ビジネス研修会」に、株式会社流導 取締役の德留さやかが登壇いたしました。
第一部では、「不動産会社のための生成AI入門セミナー」と題し、不動産実務における生成AIの活用方法や、お客様の情報収集行動の変化、安全に活用するための注意点について、実演を交えながらお話ししました。
開催概要
主催:公益社団法人 京都府宅地建物取引業協会
研修会名:令和8年度 第二回会員ビジネス研修会
講演タイトル:不動産会社のための生成AI入門セミナー
講師:株式会社流導 取締役 德留さやか
「早くお願いします」は、いつまでを意味するのか
講演では、生成AIの使い方を学ぶ前提として、まず「言葉の曖昧さ」に目を向けました。
例えば、誰かに「早くお願いします」と伝えた場合、伝えた側は「午前中まで」を想定していても、受け取った側は「今日中」と理解しているかもしれません。
人同士でも、同じ言葉から思い浮かべる内容は異なります。生成AIとのやり取りでも同様に、曖昧な言葉からは曖昧な回答しか得られません。
期待した回答が返ってこないときは、すぐに「AIは使えない」と判断するのではなく、自分がどのような情報を、どこまで具体的に伝えたのかを振り返ることが大切です。
お客様は、来店前にAIで調べている
生成AIを理解する必要があるのは、業務を効率化するためだけではありません。
現在は、お客様自身が物件や地域、取引の仕組み、不動産会社の評判などをAIで調べたうえで来店するケースが増えています。
例えば、AIで候補物件を絞り込み、店舗では選んだ物件だけを確認する。あるいは、査定価格について「AIが出した金額と違うのはなぜですか」と質問するなど、来店を“答え合わせの場”として利用するお客様もいます。
生成AIは、一般的な情報を短時間で分かりやすく整理することを得意としています。一方で、地域の実情や物件固有の事情まで正確に把握しているとは限りません。
だからこそ不動産会社には、AIが提示する一般論を理解したうえで、「この物件の場合はどうなのか」「この地域では実際にどうなのか」を説明する力が、これまで以上に求められます。
生成AIへの指示は、4つの項目で具体化する
講演では、複雑なプロンプトを暗記しなくても使える、基本的な指示の組み立て方をご紹介しました。
生成AIに依頼するときは、次の4項目を意識します。
- 誰に向けた内容なのか、どのような立場で回答してほしいのか
- 何のために作成するのか
- 絶対に外してほしくない条件は何か
- どのような形式で出力してほしいのか
例えば物件紹介文であれば、「30代の子育て世帯に向けて」「安心感が伝わる内容で」「300文字以内」といった条件を加えることで、目的に合った文章を作りやすくなります。
最初から完璧な指示を作る必要はありません。出てきた回答を見ながら、「もう少し親しみやすく」「この情報を追加して」「違う切り口でも提案して」と対話を重ねることが、生成AIを使いこなすポイントです。
AIが質問してくる情報に、人の価値が表れる
会場では、物件資料をもとに紹介文を作成する実演も行いました。
生成AIに物件資料を読み込ませ、ファミリー層向けの紹介文や、不動産ポータルサイトへの入稿を想定した文章一式を作成させると、物件の特徴やおすすめポイント、営業担当者のコメントなどが短時間で整理されます。
一方で、AIからは次のような追加情報を求められました。
- 各居室が実際にどのように使われていたか
- バルコニーから何が見えるか
- 売主様が暮らしていて良かったと感じた点
- 現地でなければ分からない周辺環境や生活感
これらは、資料やインターネットだけでは得られない一次情報です。
生成AIが普及し、一般的な文章を誰でも作れるようになるほど、現地を見た人、売主様から話を聞いた人、地域をよく知る人が持つ情報の価値は高まります。
AIに任せられる作業はAIに任せながら、人にしか集められない情報を丁寧に蓄積することが、これからの不動産会社の強みになります。
自社の強みを、複数の切り口から見直す
自社ホームページを生成AIに読み込ませ、「マーケティングの専門家として、強みと弱みを分析してください」と依頼する活用方法もご紹介しました。
さらに、「切り口を変えて3案提案してください」と指示することで、自社だけでは思いつかなかった顧客層や、サービスの見せ方を比較できます。
AIの提案に違和感があった場合も、その違和感自体が重要です。
「本当に来てほしいお客様は、その層ではない」「自社が大切にしているのは、そこではない」と感じた内容をAIに伝え直すことで、自社の方針やターゲットを言語化できます。
AIに正解を決めてもらうのではなく、AIから異なる視点を受け取り、人が判断するための材料として使うことが大切です。
画像生成では「してほしくないこと」も伝える
不動産実務で活用が広がっている画像生成についても、実演を交えて解説しました。
例えば、室内写真から残置物を取り除く場合は、「残置物をすべて消してください」だけでなく、次のように、してほしくないことも明確に伝えます。
「建物の構造を変えたり、本来よりきれいにしたりするなど、物を消す以外の加工はしないでください」
また、AIが対象物を正しく認識できない場合は、「棚」「ラグ」といった物の名前だけでなく、「画面右側にある茶色の物」「床の中央にある白い物」のように、位置や色を伝えると改善することがあります。
家具を配置したホームステージング画像を作成し、内覧後のお客様にリフォーム後の暮らしをイメージしていただくなど、接客での活用も考えられます。
ただし、生成・加工した画像を広告などに使用する場合は、実物と誤認されないよう、「AIで生成・加工したイメージ」であることを明記する必要があります。
安全に利用するための社内ルールを決める
生成AIは便利ですが、安全に使うためのルールが欠かせません。
講演では、特に次の点をお伝えしました。
- 氏名や住所などの個人情報をそのまま入力しない
- 分析に必要な場合は、氏名をIDに置き換えるなど匿名化する
- AIの回答には、もっともらしい誤情報が含まれる可能性がある
- 法律や制度に関する内容は、必ず公的機関などの情報と照合する
- 特定の作家や作品の意図的な模倣につながる指示を避ける
- 入力してよい情報と入力してはいけない情報を社内で決める
- 最終的に誰が内容を確認するのかを明確にする
AIが出力した内容に対する最終的な判断と責任は、人にあります。
禁止するだけでは現場での利用状況を把握できなくなる可能性もあります。安全に使える範囲と確認手順を社内で決め、業務に取り入れていくことが重要です。
おわりに
今回のセミナーでは、物件紹介文の作成、自社ホームページの分析、画像生成など、不動産実務を想定したデモを交えながら、生成AIの活用方法をご紹介しました。
生成AIの活用で大切なのは、AIにすべてを任せることではありません。
AIが得意な文章作成や情報整理を活用しながら、現地で得られる情報やお客様との対話、人だからこそできる判断に、より多くの時間を使うことが重要です。
ご参加いただいた皆様が、今回の内容から一つでも「明日から試してみよう」と思える活用方法を見つけていただけましたら幸いです。
このたびは貴重な機会をいただき、誠にありがとうございました。

