公益社団法人広島県宅地建物取引業協会様主催「不動産会社のための生成AI入門セミナー」に登壇いたしました

2026年9月16日、公益社団法人広島県宅地建物取引業協会様様主催の福山会場での研修会にて、「不動産会社のための生成AI入門セミナー」をテーマに、弊社取締役・行政書士の德留さやかが登壇いたしました。

本講演では、生成AIの基本的な仕組みや不動産実務での活用方法に加え、お客様がAIを使って不動産会社を選ぶ時代に求められる情報発信、個人情報や誤情報などのリスク、AIと人間の仕事をどのように分担するかについて解説しました。

■主催

公益社団法人広島県宅地建物取引業協会様

■タイトル

不動産会社のための生成AI入門セミナー

■講師

株式会社流導 取締役/行政書士 德留 さやか

■内容

生成AIを業務で利用することについて、「まだリスクの方が大きいのではないか」と考えている不動産会社も少なくありません。

講演では、こうした慎重な姿勢を否定するのではなく、生成AIにどのようなリスクがあるのかを理解し、安全に使う範囲を自社で決めることが大切であるとお伝えしました。

そのうえで、文章作成、物件紹介、画像加工、マーケティング、社内教育など、不動産会社が実務で取り入れやすい活用方法を実演しました。

同じ言葉でも「仕事の完了」は人によって異なる

講演の冒頭では、実際に弊社内で起きた請求書発行の事例を紹介しました。

德留は、事務担当者へ請求書の作成を依頼し、取引先による内容確認が終わってから郵送するつもりでした。一方、事務担当者は、請求書を作成した時点で自分の仕事が完了したと考え、そのまま郵送していました。

両者とも依頼された仕事を進めていましたが、「仕事の完了」をどの時点と考えるかが異なっていたため、認識のズレが生じました。

これは、人間同士だけでなく、AIとのやり取りでも起こります。

自分が使っている言葉をAIも同じ意味で理解しているとは限りません。AIから意図に合った回答を得るには、「何をしてほしいのか」だけでなく、目的や条件、完了の状態まで具体的に伝えることが重要です。

お客様がAIで不動産会社を選ぶ時代へ

不動産会社の数が増えるなか、お客様は自分に合う会社を探すために生成AIを利用するようになっています。

来店前に物件情報や売却時の注意点を調べるだけでなく、「地域で信頼できる不動産会社を教えて」とAIに質問し、相談先の候補を選ぶ動きも始まっています。

講演では、AIから勧められたことをきっかけに問い合わせをするお客様が実際に現れている事例を紹介しました。

また、AIで事前に情報を調べたお客様は、AIの回答と営業担当者の説明を比較します。そのため、不動産会社側も、AIがお客様へどのような情報を示しているのかを知っておく必要があります。

AIで調べれば分かる一般的な情報だけでは、相談先として選ばれる理由にはなりにくくなっています。

実際に現地を見た人にしか分からないことや、地域で取引を重ねてきた会社だからこそ持っている情報を発信することが、今後さらに重要になります。

AIへの指示に入れたい4つの項目

生成AIから得られる回答は、与える背景情報によって大きく変わります。

講演では、AIへ指示を出す際の基本として、次の4点を紹介しました。

1.誰に向けた内容なのか
2.何のために作るのか
3.外せない条件は何か
4.どのような形式で受け取りたいか

例えば、「物件紹介文を作って」と伝えるだけでは、誰に向けた文章なのか分からないため、当たり障りのない内容になりやすくなります。

「不動産売買のプロとして、30代のファミリー層に向けて、安心感が伝わる物件紹介文を300字程度で作成してください」と伝えれば、対象や目的に沿った回答を得やすくなります。

営業経験のある担当者は、物件を見たときに「どのようなお客様に合いそうか」を経験から判断しています。

その判断に至った背景を言葉にしてAIへ渡すことで、一般的な文章ではなく、担当者の知識や経験が反映された文章へ近づけることができます。

AIに答えられない現地情報を発信する

物件紹介文の実演では、物件資料をChatGPTへ読み込ませ、ファミリー層に向けた紹介文を作成しました。

さらに、「同じ条件でSUUMOに入稿するためのすべての文章を作成して」と指示し、キャッチコピー、おすすめポイント、物件紹介文、営業担当者コメント、周辺環境コメントなどへ展開しました。

一方、AIが資料から作れる文章だけでは、他社との違いが出にくい場合があります。

バルコニーから実際に何が見えるのか、室内でどのように光が入るのか、管理状態はどうかといった情報は、現地を訪れた人でなければ分かりません。

AIが答えられない情報を自分の目で確認し、発信内容へ加えることが、お客様から見ても、AIから見ても、その会社を選ぶ理由になります。

自社の強みと弱みを客観的に分析する

講演では、自社のホームページをAIに読み込ませ、強みと弱み、今後の打ち出し方を分析する方法も紹介しました。

AIに提案を求める際は、一つの回答だけでなく、「切り口を変えて3案出してください」と指示することで、長期的なブランド戦略、短期的な集客施策、対象顧客別の訴求など、複数の方向から検討できます。

AIはホームページに掲載されている情報から会社の特徴を分析するため、経営者が考えている自社の強みとは異なる結果が出る場合があります。

その場合は、「AIが間違っている」と考えるだけでなく、自社が伝えたい強みがホームページ上で正しく表現できているかを見直す材料として活用できます。

ただし、AIは地域のお客様の性格や、自社がどの方向へ進みたいかまでは判断できません。

AIから出された案をもとに、地域の事情や自社の方針を加え、最終的な戦略を決めるのは人間の役割です。

画像生成では「してはいけないこと」も伝える

画像生成の実演では、室内写真から残置物を削除し、ホームステージングを行う方法を紹介しました。

残置物を削除するときには、消してほしい物だけでなく、「建物の構造を変えない」「本来の状態よりきれいにしない」「物を消す以外の加工は行わない」といった禁止条件も伝えます。

AIは利用者の目的を推測し、依頼していない部分まで加工することがあります。「してほしいこと」と「してはいけないこと」を同時に伝えることで、意図しない変更を抑えられます。

また、AIは画像に写っている物を人間と同じように認識しているわけではありません。棚と残置物、絨毯と床などを正しく区別できない場合があります。

生成された結果をそのまま使うのではなく、建物の状態や物件情報と異なる部分がないかを人が確認する必要があります。

AIで加工した物件画像を掲載する場合には、「AIで加工した画像」「イメージ図」などの表示を付け、実際の状態と誤認されないようにすることもお伝えしました。

個人情報・誤情報・著作権のリスク

生成AIを業務で利用するうえで、特に注意が必要なものとして、次の3つのリスクを取り上げました。

1.個人情報や機密情報の漏洩
2.誤情報の発信
3.著作権の侵害

契約書や重要事項説明書をAIに確認させる場合でも、顧客情報を入力した後のデータをそのまま読み込ませてはいけません。

過去の取引実績を分析する場合には、氏名、生年月日、連絡先などを削除し、住所も分析に必要な地域単位までに絞るなど、個人を特定できない状態へ加工します。

また、社員が分からないことをAIへ質問し、その回答を確認せずにお客様へ伝えると、誤情報によるトラブルにつながる可能性があります。

AIが作った資料や回答は、内容を判断できる担当者が確認してからお客様へ渡すというルールが必要です。

生成画像や文章についても、既存作品を意図的にまねる指示を避け、どのような指示で制作したのかという過程を記録しておくことが重要です。

最終確認者を名指しで決める

会社としてAIを導入する場合には、社員が迷わず使えるよう、利用ルールを一枚程度にまとめることを提案しました。

特に重要なのは、次の3点です。

・入力してよい情報と、入力してはいけない情報を決める
・AIが作った内容の最終確認者を名指しで決める
・業務で利用するツールと会社用アカウントを用意する

「誰かに確認してください」というルールでは、確認されないまま使用される可能性があります。「必ず〇〇さんに確認してもらう」と担当者を明確にすることで、確認の流れを実際の業務へ組み込めます。

また、私生活で使用している個人のAIアカウントと業務用アカウントを分けることも、会社としての利用状況を管理するうえで重要です。

基礎教育はAI、暗黙知は人が伝える

従業員教育では、AIと人間がそれぞれ得意な部分を分担できます。

基礎知識や反復練習は、同じ質問へ何度でも回答できるAIが得意です。一方、商談であえて数秒の間を取った理由や、お客様の表情から何を読み取ったのかといった経験に基づく判断は、人が伝える必要があります。

講演では、基礎教育をAIに担わせ、実際の商談への同行や現場での判断を先輩社員が教えるという分担例を紹介しました。

過去の取引記録や営業記録を残しておけば、AIによる分析や教育にも活用できます。

人が繰り返し説明する必要のない知識はAIへ任せ、人にしか分からない経験や判断を人から人へ伝えることが、これからの教育設計では重要になります。

どの仕事を人間の仕事として残すのか

不動産業界では、物件検索、資金シミュレーション、内覧予約、電子契約など、これまで人が対応していた業務がオンラインへ移行しています。

AIやデジタル技術を使い、人に会わずに取引を進めたいお客様もいれば、最初から最後まで担当者に伴走してもらいたいお客様もいます。

どちらが正しいということではありません。

自社には現在どのようなお客様が多いのか、今後どのようなお客様に来てほしいのか、どの仕事を自社の価値として残したいのかを決める必要があります。

AIにできる仕事をすべてAIへ渡すのではなく、自社がお客様へ提供したい体験を考えたうえで、人が担う仕事とAIへ任せる仕事を選ぶことが重要です。

■おわりに

生成AIの活用では、使うこと自体を目的にするのではなく、どこまでAIへ任せ、どこから人が判断するのかを決める必要があります。

まずは毎日一度AIに触れ、やり取りの特徴を理解することから始めます。そのうえで、社内ルールを整え、最も手間がかかっている業務や、できれば減らしたい業務について、AIで支援できないかを試します。

今回の講演では、すべてを一度に導入するのではなく、明日から試すことを一つ決めていただくよう参加者の皆様へお伝えしました。

今後も株式会社流導では、不動産会社が生成AIのリスクを正しく理解し、自社の方針やお客様に合わせて、人とAIの仕事を設計できるよう、実務に即した支援を行ってまいります。