
2026年9月15日、公益社団法人広島県宅地建物取引業協会様主催の研修会にて、「不動産会社のための生成AI入門セミナー~今からでも間に合う不動産AI活用の第一歩~」をテーマに、弊社取締役・行政書士の德留さやかが登壇いたしました。
本講演では、これから生成AIを業務に取り入れたい不動産会社に向けて、生成AIとインターネット検索の違い、AIへの指示の出し方、不動産実務での活用例、安全に利用するための注意点について解説しました。
■主催
公益社団法人広島県宅地建物取引業協会
■タイトル
不動産会社のための生成AI入門セミナー
~今からでも間に合う 不動産AI活用の第一歩~
■講師
株式会社流導 取締役/行政書士 德留 さやか
■内容
生成AIに関心はあっても、「情報が漏れるのではないか」「AIは嘘をつくと聞いた」「どのサービスを使えばよいのか分からない」といった不安から、業務での利用に踏み出せていない不動産会社は少なくありません。
講演では、生成AIを安全に使うためには、便利な機能だけでなく、AIがどのような仕組みで回答をつくり、どのような場面で誤りが起きるのかを理解することが重要であるとお伝えしました。
同じ言葉でも、人によって意味は異なる
講演の冒頭では、「働く」という言葉を別の言葉で表し、さらにその反対にある状態を考えるワークを実施しました。
参加者の皆様からは、「働く」の反対として「暇」「遊び」「迷惑」「怠惰」「動かない」「消費」「役立たず」など、さまざまな言葉が挙がりました。
普段は同じ意味だと思って使っている言葉でも、人によって捉え方は異なります。
これは生成AIへの指示も同じです。「物件紹介文を作って」と伝えるだけでは、誰に、何を、どのような目的で伝えたいのかが分からないため、一般的で当たり障りのない文章になりやすくなります。
AIから自社の意図に合った回答を得るには、自分がその言葉をどのような意味で使っているのかを具体的に伝える必要があります。
生成AIはインターネット検索とは異なる
インターネット検索は、インターネット上に存在する情報から、入力内容に近いページを探して表示します。
一方、生成AIは、事前に学習した情報と利用者が入力した内容をもとに、質問に続く回答を予測して生成します。
そのため、生成AIは文章の叩き台や要約、アイデア出し、繰り返し作業を得意とする一方、最新かつ正確な事実の確認や、責任を伴う最終判断には向いていません。
学習した情報に答えがない場合でも、AIは不足している部分を推測で補い、事実ではない内容をもっともらしく回答することがあります。
AIが誤ること自体を完全に防ぐのではなく、誤る可能性を前提として、任せる仕事と人が確認する仕事を分けることが大切です。
AIへの指示は4つの項目で具体化する
講演では、AIへの指示に盛り込む基本項目として、次の4点を紹介しました。
・誰に向けた内容なのか
・何のために作るのか
・外せない条件は何か
・どのような形式で受け取りたいか
例えば、単に「物件紹介文を作って」と伝えるのではなく、「不動産売買のプロとして、30代のファミリー層に向けて、安心感が伝わる物件紹介文を300字程度で作成してください」と具体化します。
また、最初から完璧な回答を求めるのではなく、AIが作った叩き台に対して情報や条件を追加し、会話を重ねながら仕上げることも重要です。
講演では、物件資料を読み込ませて紹介文を作り、さらにSUUMOへ入稿するキャッチコピー、おすすめポイント、営業担当者コメント、周辺環境コメントなどへ展開する方法を実演しました。
家具消しやホームステージングにも活用できる
画像生成の実演では、室内写真から残置物を削除し、その部屋をモダンな和室へホームステージングする方法を紹介しました。
このとき重要なのが、AIに「してほしいこと」だけでなく、「してはいけないこと」も伝えることです。
例えば、残置物を削除するときには、「建物の構造を変えたり、本来の状態よりきれいにしたりするなど、物を消す以外の加工は行わない」と条件を加えます。
AIは利用者の意図を推測し、依頼していない部分まで加工することがあります。指示の範囲を明確にすることで、こうした行き過ぎた処理を抑えることができます。
一方、AIは画像内の物を人間と同じように認識しているわけではありません。棚と残置物、絨毯と床などを正しく区別できない場合があるため、生成された画像は人が確認する必要があります。
また、実際の物件写真をAIで加工した場合には、「生成AIで作成したイメージ画像」であることを明記し、実物の写真と誤認されないようにすることもお伝えしました。
必ず覚えておきたい3つのリスク
生成AIを業務で利用する際の主なリスクとして、次の3点を取り上げました。
1.個人情報が漏洩するリスク
2.AIが誤った情報を生成するリスク
3.著作権を侵害するリスク
顧客情報を分析する場合でも、氏名、電話番号、メールアドレス、生年月日、細かな住所などをそのまま入力してはいけません。
分析に必要な情報だけを残し、生年月日を年齢へ置き換える、住所を市町村単位にまとめる、氏名を顧客番号へ置き換えるなど、個人を特定できない状態にしてから利用します。
また、AIが示した回答に出典が付いていても、それだけで正しいとは限りません。存在しない文献や、内容と一致しないページが示されることもあります。
お客様へ渡す資料については、知識を持つ担当者が内容を確認し、出典のページを実際に開いて、該当する情報が記載されているところまで確かめる必要があります。
生成画像についても、既存のキャラクターや作品を想起させる指示を避け、どのような指示から生成したのかという記録を残しておくことが重要です。
社員が安心して使えるルールを決める
会社として生成AIを導入する場合、単に「AIを使ってください」と伝えるだけでは、社員は安心して利用できません。
講演では、少なくとも次の内容を会社として決めることを提案しました。
・入力してよい情報と、入力してはいけない情報
・利用を認めるAIツール
・禁止する使い方
・AIが作成した内容を誰が最終確認するか
やってよいことと、やってはいけないことの範囲が明確になれば、社員は必要以上に怖がることなく、ルールの中で生成AIを試せるようになります。
AIによって仕事がなくなるのではなく、会社の違いが明確になる
講演の最後には、AIが進歩すると不動産の仕事はなくなるのかについても考えました。
物件検索、物件提案、資金シミュレーション、内覧予約、電子契約などをオンラインで完結させたいお客様がいる一方、人に会って相談し、安心して取引を進めたいお客様もいます。
また、最初と最後だけ来店し、途中はオンラインで進めたいというお客様もいます。
重要なのは、すべての会社が同じ方法を採用することではありません。自社がどのようなお客様に来てほしいのか、そのお客様にどのような体験を提供したいのかを決めることです。
生成AIを使うこと自体を目的にせず、自社が選ばれたいお客様に合わせて、AIと人が担う仕事を設計する必要があります。
■おわりに
生成AIを安全に活用するには、まず自分自身が日常的にAIへ触れ、その得意なことと苦手なことを理解する必要があります。
そのうえで、個人情報を入力しない、生成された内容を人が確認する、著作権に配慮するなど、会社としての利用ルールを整えることが重要です。
講演では、すべての方法を一度に覚えるのではなく、「明日試してみることを一つ決める」ことを参加者の皆様へお願いしました。
今後も株式会社流導では、不動産会社が生成AIを必要以上に恐れることなく、リスクを理解したうえで実務へ取り入れられるよう、現場に即した活用方法を発信してまいります。

