
2026年9月8日、公益社団法人福島県宅地建物取引業協会 会津若松支部様主催の研修会にて、「1人社長のための経営戦略セミナー~1人でも実行可能な戦略設計の考え方~」をテーマに、弊社代表取締役の木村圭志がオンラインで登壇いたしました。
本講演では、顧客対応、集客、契約、事務作業、契約後のフォローまでを担う不動産会社の1人社長に向けて、経営課題を整理し、決めた戦略を実行し続けるための方法を解説しました。
■主催
公益社団法人福島県宅地建物取引業協会 会津若松支部
■タイトル
1人社長のための経営戦略セミナー
~1人でも実行可能な戦略設計の考え方~
■講師
株式会社流導 代表取締役 木村 圭志
■内容
1人社長は、お客様と直接向き合う仕事だけでなく、集客方法の検討、新規反響への対応、契約書類の作成、決済後のフォローなど、事業に関わる多くの業務を自ら担っています。
毎日忙しく働いているにもかかわらず、売上が思うように伸びない場合、原因は経営者の努力や能力ではなく、1人で複数の役割を担う構造にあるかもしれません。
講演では、経営課題を分解して理解し、AIを活用して改善を続け、最後は自分の言葉で戦略を決めるという流れで、実践方法をお伝えしました。
売上を「時間・単価・成約率」に分解する
売上が伸びないときに、漠然と「もっと頑張る」と考えても、具体的な行動にはつながりません。
本講演では、1人社長の売上を「時間・単価・成約率」の3つに分解しました。
時間については、本業以外の作業に追われていないか、判断に迷って手が止まっていないか、振り返らないまま同じ方法を繰り返していないかを確認します。
単価については、値引きを前提に受注していないか、自社の付加価値をお客様が納得できる言葉で説明できているかを見直します。
成約率については、自社に合う見込み客を見極められているか、失注理由を分析せずに次の案件へ進んでいないかを確認します。
課題を分解することで、時間の使い方を変えるのか、価値の伝え方を見直すのか、顧客対応を改善するのか、取り組むべき場所が明確になります。
社長にしかできない仕事を見極める
1人社長がすべての業務を抱えたままでは、売上を伸ばすための新しい取り組みに時間を使えません。
そこで、日々の業務を「自分の判断が必要な仕事」と「他の人やAIへ任せられる仕事」に切り分ける方法をご紹介しました。
例えば、重要事項説明書の下書きを外部へ依頼し、社長は最終確認を行う方法があります。初回対応を社長が担当し、内覧案内を他の人へ任せる方法も考えられます。
どの業務を任せるべきかに、すべての会社へ共通する正解はありません。
お客様とのどの接点に社長が関わると信頼につながるのかを考え、自分にしかできない仕事へ時間を集中させることが重要です。
紹介営業にも2つの戦略がある
講演では、不動産会社の集客を「ポータルサイト」「紹介」「自社の集客導線」に分けました。今回は、集客方法のなかでも紹介の導線について掘り下げました。
紹介営業には、大きく2つの方向性があります。
一つは、1件ずつ丁寧に対応し、自分の顔と名前で信頼を積み重ねる「人柄営業」です。
もう一つは、自分が動けないときでも紹介が止まらないよう、再現可能な仕組みを整える方法です。
どちらが正しいというものではありません。大切なのは、自分が関係の深さと紹介の質を重視するのか、再現性と事業規模を重視するのかを決め、選んだ戦略をやり切ることです。
新しい方法を知るたびに戦略を変えていると、どの取り組みも成果が出る前に止まってしまいます。戦術は途中で変更しても、まずは選んだ方向性を、自分が納得するまで、または成果を検証できるまでやり切ることが重要です。
AIを1人社長の「振り返り相手」にする
1人社長には、日々の行動を確認し、改善点を指摘してくれる上司がいません。そのため、振り返りが感覚的になったり、自己評価が甘くなったり、反対に厳しくなりすぎたりすることがあります。
講演では、AIを経営の最終判断者ではなく、PDCAを回すための壁打ち相手として活用する方法をご紹介しました。
例えば、月間売上300万円、契約単価100万円、成約率33%という条件をAIへ伝えれば、必要な契約件数や相談件数、行動量を逆算するための叩き台を作れます。
そのうえで、実際に行ったアプローチ数、相談件数、成約につながった行動などを記録し、AIに読み込ませて振り返ります。
特別なシステムを導入する必要はありません。スプレッドシートやメモアプリ、商談音声の文字起こしなど、毎日続けられる方法で記録することが重要です。
AIから改善案を受け取って終わるのではなく、翌日に一つ試し、その結果を再び記録することで、改善のサイクルを継続できます。
判断の軸を自分の言葉にする
仕組みを整えても、経営者自身の判断基準が曖昧なままでは、決めた戦略を続けることが難しくなります。
講演では、弊社が開発している言語化メソッド「Sail」を用いて、曖昧な感覚を判断の軸となる言葉へ変えるワークを実施しました。
参加者の皆様には、経営者または営業担当者として大切にしていることを書き、その反対にある状態も言葉にしていただきました。
木村の場合、「経営者として大切にしていること」の一つとして「自分が楽しいと思えるか」を挙げ、その反対側には「やるべきだから行う」という状態と、「義務」という言葉が現れました。
大切にしたいことと、望まない状態を並べることで、自分が何を基準に仕事を選び、何を他の人へ任せるべきかが見えやすくなります。
AIは一般的な戦術を提案できますが、経営者が何を楽しいと感じ、どのような会社をつくりたいかまでは判断できません。
自分の価値基準を言葉にしてAIへ伝えることによって、AIを自社の方向性に合った支援者として活用できるようになります。
■おわりに
1人社長が事業を成長させるためには、業務量を増やすだけでなく、現在の課題を分解し、自分が担う仕事と任せる仕事を見直す必要があります。
さらに、目標から必要な行動量を逆算し、記録、振り返り、改善を続ける仕組みをつくることが重要です。
AIは、計画の作成や行動の分析、改善案の提示を支援できます。一方、何を大切にし、どの戦略を選ぶかを決めるのは経営者自身です。
今後も株式会社流導では、不動産会社の経営者がAIを活用して業務を仕組み化し、人材を育て、持続的に成長するための実践的な取り組みを発信してまいります。

