
2026年8月27日、一般社団法人兵庫県宅地建物取引業協会様主催の研修会にて、「不動産会社のための生成AI入門セミナー」をテーマに、弊社取締役・行政書士の德留さやかが登壇いたしました。
本研修には兵庫県内の各支部から役員の皆様が参加されており、生成AIの基本的な仕組みや不動産実務での活用方法に加え、会員へ安全な利用方法を伝える際の注意点についても解説しました。
■主催
一般社団法人兵庫県宅地建物取引業協会
■タイトル
不動産会社のための生成AI入門セミナー
■講師
株式会社流導 取締役/行政書士 德留 さやか
■内容
本セミナーでは、生成AIを使い始めた方には現在の使い方を見直す機会として、まだ使ったことがない方には今後利用するかどうかを判断するための機会として、生成AIの仕組みと実務での活用方法をお伝えしました。
今回は、物件紹介文の作成やホームページの分析、物件画像の加工、間取り図の再作成といった実演に加え、AIが出した情報や画像をどのように確認するか、不動産相談へAIを導入する際にどのような点へ注意すべきかを取り上げました。
AIが出すのは「正解」ではなく「正解のようなもの」
現在は、物件相場や地域情報、媒介契約の違いなどを生成AIで調べてから、不動産会社へ相談するお客様が増えています。
お客様がAIからどのような説明を受けているのかを知らなければ、不動産会社として何を付加価値として伝えるべきかを判断することも難しくなります。
一方で、生成AIが提示する内容が、必ず正しいとは限りません。
講演では、物件資料を読み込ませ、ファミリー層向けの紹介文を作る実演を行いました。AIは「南向きバルコニーから日差しが差し込み、家族団らんの時間を楽しめます」といった文章を作成しましたが、実際の日当たりまでは確認していません。
南向きであっても、目の前に大きな建物があれば日差しが入らない可能性があります。
物件を訪れた人にしか分からない時間帯ごとの日当たり、周辺の音、空気感などを確認し、AIが作った文章に事実と異なる表現が含まれていないかを人が判断する必要があります。
「してほしくないこと」まで伝えて画像を加工する
画像加工の実演では、残置物が置かれた室内写真を使い、物を消してからホームステージングを行いました。
AIへ「残置物を消してください」とだけ指示すると、広告に使う写真だと推測し、良かれと思って建物の状態まできれいに変えてしまうことがあります。
そこで、次のように作業範囲を明確にします。
「画像から残置物をすべて消してください。建物の構造を変えたり、本来の状態よりきれいにしたりするなど、物を消す以外の加工は一切しないでください」
今回の実演では、AIが床に置かれた木の板と箱を「棚かもしれない」と判断し、棚を残した画像と消した画像の2種類を生成しました。
人には単なる残置物だと分かるものでも、AIが同じように認識するとは限りません。元画像と生成画像を比較し、構造や設備が変わっていないかを確認することが重要です。
また、AIで加工した画像を広告へ掲載する場合は、「AIによる加工画像」「イメージ画像」などと明記し、実際の物件写真と誤認されないようにする必要があります。
複雑な製図から間取り図を作れない理由
質疑応答では、建築確認申請などで使用された製図を読み込ませても、間取り図を作成できなかったという質問が寄せられました。
製図には、建物の形状以外にも多くの線や数字、記号が記載されています。そのため、AIが間取り図に必要な線だけを判別できないことがあります。
このような場合には、元の製図をそのまま読み込ませるのではなく、必要な線だけを人がトレースし、その画像から間取り図を作らせる方法をご紹介しました。
AIに同じ指示を繰り返すだけではなく、AIが判断しやすい情報へ整理して渡すことも、使い手に求められる工夫です。
不動産無料相談でAIを使う際の注意点
会場からは、不動産無料相談の回答支援にAIを利用する場合、相談者に偏った回答をする危険性はないかという質問も寄せられました。
相談者から提供される情報が一方の立場に偏っていれば、AIもその情報を前提に回答を作ります。また、生成AIには利用者へ寄り添おうとする傾向があるため、相談者の主張を必要以上に肯定する可能性があります。
そのため、AIへ単に「相談に答えて」と指示するのではなく、「協会の相談担当者として、中立的な立場から事実関係を整理し、相談者を適切な解決へ導く」といった役割や判断基準を設定する必要があります。
そのうえで、回答が設定した基準に沿っているかを人が確認し、AIだけで最終判断を行わない体制が必要であるとお伝えしました。
会員へ伝える側だからこそ、社内ルールを明確にする
生成AIの業務利用では、個人情報の入力、誤情報の発信、著作権侵害などのリスクがあります。
契約書や重要事項説明書を確認させる場合も、顧客の氏名、住所、連絡先などを削除し、個人を特定できない状態にしてから利用する必要があります。
会社としては、少なくとも次の項目を決めておくことが重要です。
・AIへ入力してよい情報と禁止する情報
・業務で使用してよいAIツール
・生成された文章や画像を確認する担当者
・問題が見つかった場合の報告方法
「人が確認する」とだけ決めるのではなく、誰が確認するのかまで明確にすることで、安全に活用しやすくなります。
■おわりに
生成AIを活用するうえで重要なのは、ツールの操作方法だけではありません。
誰に向けた回答なのか、何を実現したいのか、外せない条件は何かを具体的に伝え、出てきた内容を人が確認することが必要です。
特に、会員や一般消費者から相談を受ける立場では、AIの回答をそのまま正解として扱わず、情報の偏りや不足を確認し、中立性を保つことが求められます。
今後も株式会社流導では、不動産会社や業界団体が生成AIを安全かつ実践的に活用できるよう、不動産実務に即した活用方法とリスク対策をお伝えしてまいります。

