「第10回 JAPAN BUILD OSAKA」にて、上司よりAIを信じる時代、経営者は何を語るのかに登壇いたしました

2026年8月26日、インテックス大阪で開催された「第10回 JAPAN BUILD OSAKA-建築・土木・不動産の先端技術展-」にて、「上司よりAIを信じる時代、経営者は何を語るのか」をテーマに、弊社代表取締役の木村圭志が登壇いたしました。

本講演では、独立研究者・言語学者であり、弊社CGOを務める伊藤雄馬とともに、AIが瞬時に“正解”を示す時代における経営者の役割と、「理念」「言葉」「社会の見方」から組織づくりを見直す方法についてお伝えしました。

■主催

RX Japan合同会社

■展示会

第10回 JAPAN BUILD OSAKA
-建築・土木・不動産の先端技術展-

■タイトル

Labo-4:上司よりAIを信じる時代、経営者は何を語るのか

■登壇者

株式会社流導 代表取締役 木村 圭志
独立研究者/言語学者 伊藤 雄馬

■内容

社員から「上司の説明よりAIの回答の方が分かりやすい」と思われる時代に、経営者や管理職は何を語るべきなのでしょうか。

講演では、上司の言葉とAIの言葉が、どちらも一般論を借りてきただけのものであれば、より速く、正確に回答するAIを信じることは合理的であるという問題提起から始めました。

知識や情報の量だけでAIと競うのではなく、経営者自身の経験や社会の見方に裏打ちされた言葉を持つことが、AI時代の組織づくりでは重要になります。

AIが持たない「私観」と「世界観」

本講演では、言葉の文脈をつくるものとして、「私観」と「世界観」という考え方を紹介しました。

「私観」とは、自分をどのような人間として捉えているかという見方です。「世界観」とは、自分が社会や周囲の出来事をどのように見ているかを指します。

例えば、同じ「挑戦」という言葉を使っていても、失敗を成長の機会と考える人と、損失を避けるべきだと考える人では、その意味が異なります。

AIは、膨大な情報から一般的な回答を提示できます。しかし、経営者が何を経験し、何に違和感を持ち、どのような社会をつくりたいと考えているかまでは、自動的に理解できません。

経営者自身が私観と世界観を言葉にし、AIや社員へ渡すことによって、一般論ではない、その会社独自の判断や行動につなげることができます。

言葉のズレを、消すべき問題として扱わない

組織では、「仕事を教えた」と考える上司に対して、社員が「教わっていない」と感じることがあります。

このとき、どちらかが嘘をついているとは限りません。「教える」または「仕事」という言葉の意味が、両者の間で異なっている可能性があります。

講演資料では、流導で実際に起きた事例として、「自律的に働く」という言葉を二人の社員が正反対の意味で捉えていたケースも紹介しました。

一般的には、このような認識のズレは、修正すべきエラーとして扱われます。一方、流導では、ズレを消さずに並べることで、それぞれがどのような経験や価値観から言葉を使っているのかを確認しています。

言葉の定義が異なるまま説明だけを繰り返しても、組織内の認識はそろいません。まず何がずれているのかを明らかにすることが、対話とマネジメントの出発点になります。

理念に「望まない姿」を対で書く

理念は、会社が目指す姿を示すものです。しかし、前向きな言葉だけでは、人によって異なる解釈が生まれる場合があります。

流導では、理念の一文ごとに、それと対になる「望まない姿」を書いています。

例えば、「何を目指すか」だけでなく、「どのような状態にはなりたくないのか」まで言葉にすることで、理念の境界が明確になります。

その内容をもとに社員が行動指針をつくり、実際に使いながら更新を続けています。完成した理念を掲示するだけではなく、日々の判断に使い、違和感が生まれたときに見直すことが重要です。

実践を通じて生まれた言葉は、借りてきたきれいな言葉とは異なり、自分の経験として語ることができます。

借り物の言葉を見分けるワーク

講演では、言葉が自分自身の実感から生まれたものかを確かめる方法として、その言葉の「反対」を考えるワークを紹介しました。

例えば、「挑戦」の反対を尋ねられた際に、「安定」や「保守」という辞書的な言葉だけが出てくる場合、その「挑戦」は一般論から借りてきた言葉である可能性があります。

実践に裏打ちされた言葉には、その人の経験や文脈が反映されます。そのため、反対側にも、その人にしか表せない具体的な状態が現れます。

講演の最後には、参加者の皆様にも「あなたにとって『挑戦』の反対は何か」を考えていただくワークを用意しました。

人と人のズレを価値に変える

講演資料では、かつて北前船が、ある土地では不要だったものを、別の土地では価値あるものとして運んだ歴史にも触れました。

土地と土地の間にあった違いが、価値を生み出していた事例です。

現在、AIは言葉を整え、誰にでも理解しやすい平均的な回答を提示します。しかし、人と人との間にある言葉のズレそのものがなくなったわけではありません。

AI時代に経営者が見つめるべきものは、社員同士、経営者と社員、会社と顧客の間に隠れている言葉のズレです。

その違いを間違いとして消すのではなく、会社独自の理念やサービス、組織づくりへ変えることが、経営者に残された重要な役割になります。

■おわりに

AIが一般的な知識や答えをすぐに示せる時代には、経営者が知識量だけで信頼を得ることは難しくなります。

一方で、AIには、経営者自身の経験から生まれた私観や世界観はありません。

自分たちは何者であり、社会をどのように見て、何を目指し、何を望まないのか。その言葉を借り物ではなく、自分たちの実践から語ることが、AI時代の理念とマネジメントには求められます。

今後も株式会社流導では、AI活用だけでなく、理念、言葉、コミュニケーションのあり方を見直し、人と組織が自分たちの言葉で動ける環境づくりに取り組んでまいります。