
2026年9月2日、宅建マイスターメンバーズクラブ主催の「MMCサマーセミナー」にて、「顧客がAIを使う時代、不動産業の価値はどう変わるのか~実例に学ぶ宅建マイスターのAI突破法~」をテーマに、弊社代表取締役の木村圭志が登壇いたしました。
本講演では、生成AIを使って情報を集めてから不動産会社へ相談するお客様が増えるなか、不動産会社や宅建マイスターに求められる役割について、具体的な活用事例や実演を交えて解説しました。
■主催
宅建マイスターメンバーズクラブ
■タイトル
顧客がAIを使う時代、不動産業の価値はどう変わるのか
~実例に学ぶ宅建マイスターのAI突破法~
■講師
株式会社流導 代表取締役 木村 圭志
■内容
これまで、不動産会社がAIをどのように業務へ取り入れるかが主な関心事でした。
しかし、現在は不動産会社だけでなく、お客様も生成AIを使って情報を集め、比較し、相談先や物件の候補を絞り込んでいます。
講演では、「不動産会社がAIを使うかどうか」ではなく、「AIを使って判断するお客様から、それでも相談したいと思われる存在になれるか」という視点から、不動産会社と宅建マイスターの役割を考えました。
AIに推薦されたことが、問い合わせのきっかけになる
講演では、生成AIを通じた問い合わせが、すでに実際の集客につながっている事例をご紹介しました。
弊社にも、「AIで調べたところ株式会社流導が出てきたため、研修について相談したい」という問い合わせが寄せられています。
また、大阪郊外の不動産会社にも、「AIに質問したら、この会社を紹介された」という問い合わせが入るようになっています。東京都内では、AI経由で月に12件ほどの問い合わせが発生している不動産会社の事例もご紹介しました。
これらの会社からは、AIに推薦されて問い合わせをしたお客様は、成約率が高い傾向にあるという声も聞かれています。
お客様がAIとの対話を通じて、自分の希望や課題に合う会社を比較したうえで問い合わせていることが、その理由の一つとして考えられます。
小規模な不動産会社にもAI集客の機会がある
生成AIが会社を推薦する場面では、必ずしも資本力や会社の規模だけが評価されるわけではありません。
講演では、小規模な会社であっても、特定の分野に関する専門性や、地域に密着した具体的な情報を発信していれば、AIから相談先として提示される可能性があることをお伝えしました。
不動産業界では、長く「情報の非対称性」が利益につながると考えられてきました。しかし、物件情報や不動産取引の基礎知識を誰でもAIで調べられるようになり、情報を知っていることだけでは差別化しにくくなっています。
一方で、実際にその地域で取引した経験や、個別の物件で起きた問題、地域特有の判断材料などは、どの会社も同じように持っているものではありません。
全国共通の一般論ではなく、自社にしかない地域情報や取引経験を記録し、具体的に発信することが、小規模な不動産会社がAI時代に選ばれるための重要な要素になります。
お客様から“試される質問”が増えている
生成AIの普及により、お客様から不動産会社へ寄せられる質問の内容も変わり始めています。
これまでは「この物件の相場はいくらですか」と尋ねられていた場面でも、現在は「AIでは3,500万円で売れると回答された」「他社では3,400万円と言われたが、どう考えるか」と質問される場合があります。
お客様が何も知らない状態で説明を求めるのではなく、すでにAIや他社から得た情報を持ち、不動産会社の回答を確かめるような相談が増えています。
このような場面では、結論だけを伝えるのではなく、なぜその価格になるのか、どの条件を考慮したのか、どのようなリスクがあるのかを根拠とともに説明する必要があります。
知識量だけでAIと競うのではなく、現地や取引実務を知る専門家として、判断の過程まで伝えられることが重要です。
AI活用には、お客様像の解像度が求められる
生成AIを営業で活用する際にも、「30代の家族向け」といった大まかな条件だけでは、自社らしい提案にはなりません。
お客様が何を心配しているのか、何を優先しているのか、問い合わせの文章からどのような事情が読み取れるのかなど、営業担当者が把握した情報を具体的にAIへ伝える必要があります。
講演では、「誰にでも当てはまる内容は、結果として誰にも強く届かない」とお伝えしました。
AIの登場によって新しいマーケティング手法が生まれたように見えますが、実際には、対象となるお客様を理解し、その人の課題に応じた提案を考えるという、マーケティングの原点がより重要になっています。
お客様との会話から背景や感情を読み取り、その内容をAIが扱える言葉に変えることは、現場を知る営業担当者にしかできない仕事です。
ベテランの経験を「再利用できる知見」に変える
不動産会社には、ベテラン営業が感覚的に行っている質問や切り返しが数多くあります。
しかし、「なぜそのタイミングで質問するのか」と尋ねても、「こう言えばお客様が話してくれるから」としか説明できず、経験が十分に言語化されていない場合があります。
講演では、商談や接客を録音して文字起こしし、そのデータをAIへ読み込ませる方法をご紹介しました。
複数の商談記録を蓄積すれば、「この質問に対して、ベテラン営業ならどのように答えるか」「売れている営業と新人では、質問や説明にどのような違いがあるか」をAIで分析できます。
これまで本人の頭の中にしかなかった経験を記録し、他の社員が学べる知見へ変えることが、AIを人材教育へ活用する第一歩になります。
宅建マイスターは、AIが持てない「取引に精通した証」
AIは不動産に関する情報を説明できますが、自ら取引を経験したり、その結果に責任を持ったりすることはできません。
一方、宅建マイスターは、不動産取引に精通し、専門家として判断する力を備えていることを示す資格です。
さらに、それぞれの宅建マイスターが過去に扱ってきた物件や取引事例は、他の誰とも重ならない独自の経験です。同じ条件の不動産は存在しても、全く同じ物件や取引は存在しません。
資格名を掲げるだけでなく、その資格と経験を生かして何を調査し、どのようなリスクを見つけ、どのような判断を支援できるのかを伝えることが重要です。
宅建マイスターという肩書きは、AIには取得できない「取引に精通し、責任を持って判断できる人」であることの証として、今後さらに意味を持つと考えられます。
■おわりに
生成AIの普及によって、不動産会社が持つ情報や制作物の差は小さくなっていきます。
その一方で、自社にしかない地域情報、実際の取引経験、お客様の事情を読み取る力、判断の根拠を説明する力の価値は、より高まります。
AIから推薦されるためにも、問い合わせ後にお客様から信頼されるためにも、一般的な情報ではなく、自社が実際に経験し、判断してきた内容を具体的な言葉で残すことが重要です。
今後も株式会社流導では、不動産会社が生成AIを業務効率化の道具として使うだけでなく、自社の専門性や人にしか提供できない価値を高めるために活用できるよう、実務に即した情報を発信してまいります。

