「第10回 JAPAN BUILD OSAKA」にて、地方不動産会社のAI活用と成長戦略について講演いたしました

2026年8月27日、インテックス大阪で開催された「第10回 JAPAN BUILD OSAKA-建築・土木・不動産の先端技術展-」にて、「地方不動産会社でも、ここまでできる。AI活用・自社アプリ開発・若手活躍を実現した富山の実例」をテーマに、弊社代表取締役の木村圭志がモデレーターとして登壇いたしました。

本講演では、ViVi不動産株式会社の代表取締役・矢郷修治氏をゲストに迎え、人口減少や採用難、取引単価の低さといった地方不動産会社の課題を乗り越え、収益構造と人材育成を変えてきた実践事例について伺いました。

■主催

RX Japan合同会社

■展示会

第10回 JAPAN BUILD OSAKA
-建築・土木・不動産の先端技術展-

■タイトル

Labo-6:地方不動産会社でも、ここまでできる。
AI活用・自社アプリ開発・若手活躍を実現した富山の実例

■登壇者

ViVi不動産株式会社 代表取締役 矢郷 修治 氏
株式会社流導 代表取締役 木村 圭志(モデレーター)

■内容

富山市では人口減少や高齢化が進み、若い人材の採用も容易ではありません。また、ViVi不動産株式会社における売買仲介手数料の平均単価は、1件あたり約47万円です。

営業担当者が月に多くの契約を獲得しても、翌月には決済業務などに追われ、新たな案件へ十分な時間を割けなくなります。件数を増やすだけでは、売上と利益を伸ばし続けることに限界があります。

そこで同社が進めたのが、中古物件の仲介にリノベーションを組み合わせる事業への転換と、AIによる業務の仕組み化です。

購入者の9割以上がリノベーションを利用

地方は物件価格が低く、仲介手数料だけでは十分な収益を確保しにくい一方、購入予算にリノベーション費用を組み込みやすいという特徴があります。

ViVi不動産株式会社では、中古物件を購入するお客様へリノベーションを一体で提案しており、購入者の9割以上が同社のリノベーションを利用しています。

物件探しの段階から購入費用と工事費用を合わせて資金計画を立て、住宅ローンの事前審査を行うことで、購入後の暮らしまで含めた総予算を早い段階で明確にしています。

令和7年度には年間38件のリノベーションを完成させ、平均受注額は650万円、平均粗利率は40.1%となりました。

仲介会社から「家を売る会社」ではなく「暮らしをつくる会社」へ転換した結果、前々期に115万円だった経常利益は前期に3,725万円となり、約32倍に増加。リノベーション事業の売上も、0円から2億4,700万円へ伸びました。

失敗を経て再現できる事業へ

矢郷氏からは、最初から順調に事業を拡大できたわけではないというお話もありました。

リノベーション事業を本格化した当初には、マンションの工事で配管に関するミスが発生し、17階から7階までの複数の住戸へ一件ずつ謝罪に回った経験もあったといいます。

2024年は「挑戦と試行錯誤の年」であり、うまくいかないことも数多く経験しました。その失敗を一つずつ改善したことで、2025年には成果を再現できる仕組みが生まれました。

講演では、成功した結果だけでなく、失敗を隠さず、原因を見直して仕組みに変えることが事業を成長させるうえで重要だと語られました。

プログラミング未経験の社長が4か月で11個のツールを開発

中古物件とリノベーションを一体で提案すると、営業担当者には不動産、工事、資金計画など、幅広い知識が必要になります。

この負担と属人化を解消するため、矢郷氏は生成AIのClaudeを使い、4か月で11個の社内業務ツールを開発しました。

社内にプログラマーはおらず、矢郷氏自身にもシステム開発の経験はありません。現場の困りごとを日本語でClaudeへ伝え、生成されたツールを試しながら修正を繰り返しました。

最初に作った残金決済ツールは、一度で完成したものではなく、約100回の改良を重ねています。契約書類のPDFを読み込み、売主・買主や残代金の情報を反映したうえで、固定資産税や管理費などの精算金を計算し、決済案内を作成できる仕組みです。

そのほか、顧客の回答に応じて会話の流れが分岐するテレアポツール、リノベーション見積ツール、住宅ローン比較ツール、顧客の好みを整理する診断ツールなどを開発しています。

講演中には実際の画面を操作し、営業担当者がどのようにツールを利用しているのかをご紹介しました。

未経験者が4か月で契約できる育成体制

ViVi不動産株式会社では、経験者だけを採用するのではなく、異業種から転職した人材を育てる方針を採っています。

講演では、入社前は接客業の店長だった社員が、不動産未経験から約1年で年間約4,000万円の売上を上げるまでに成長した事例が紹介されました。

新人には、電話対応ツールや約40ページのアプローチブック、資金計画ツールなどを実際に見せ、「この仕組みがあれば未経験でも仕事を覚えられる」と伝えています。

さらに、株式会社流導の生成AIロープレを導入し、AIをお客様役として、社員が一人でも接客や提案の練習を繰り返せる環境を整えています。

ただし、AIだけに教育を任せているわけではありません。矢郷氏が週2回程度、練習状況を確認し、途中の小テストや最終確認を行っています。

AIによる反復練習と、人による確認を組み合わせることで、未経験者が3~4か月で契約業務を担当できる育成体制を構築しています。

自社開発と外部サービスを使い分ける

質疑応答では、すべてのツールを自社で作るべきかという点についても話が及びました。

ViVi不動産株式会社では、現場固有の課題を解決するものはClaudeで内製し、専門的な機能や完成度が求められるものは外部サービスを利用しています。

矢郷氏は、内製できるか判断に迷った場合もClaudeへ相談し、必要な機能や費用を確認したうえで、外部へ依頼するかどうかを決めています。

また、個人情報を扱うツールについては、生成AIへ直接情報を入力するのではなく、AIを使って開発したシステム上で処理するなど、利用方法を区別していることも説明されました。

生成AIを導入すれば、すぐに成果が出るわけではありません。自社の課題と、会社としてどのように生き残りたいのかを言葉にしたうえで、内製と外部サービスを使い分けることが重要です。

■おわりに

講演の最後に木村から、AIを活用する前に「自社の具体的な課題」「若手が辞める理由」「どのような会社として生き残りたいのか」を明確にする必要があるとお伝えしました。

AIは、自社の課題や目指す姿を自動的に決めてくれるものではありません。それらを具体的な言葉で伝えることで、初めて自社に合った提案や仕組みを作ることができます。

また、矢郷氏からは、新しい取り組みを「挑戦」ではなく「実験」と考え、失敗しても改善を続けることが大切だというメッセージがありました。

今後も株式会社流導では、地域の不動産会社がAIを活用して業務を仕組み化し、人材を育て、持続的に成長するための実践的な取り組みを発信してまいります。